フェレットの弁逆流フェレットさんは腫瘍やホルモン病がよく取り上げられますが、実は心臓病もあります。以前フェレットの呼吸疾患で、肺炎をご紹介しましたが、咳や呼吸が速くなる原因は心臓病でも起こります。今日は実際に心臓病の一つである弁での逆流が原因で呼吸が速くなってしまったフェレットの症例をご紹介します。フェレットの心臓病の症状症状は肺炎と似た、咳や呼吸困難、呼吸回数の増加から、心臓病に特徴的な失神、腹部膨満が見られ、また他の病気でもよくみられる元気食欲の低下などが挙げられます。発症年齢は約5歳で、ややオスで多く見られるとの報告があります。心臓病の種類ある報告では、95頭のフェレットで見られた心臓病で最も多かった病気は弁逆流であり、次いで不整脈、心室の拡大、心室の肥大でした。弁逆流が認められた症例のうち、53%の症例は1つの弁で、残りの47%は2つ以上の弁で逆流が認められました。最も逆流が多い弁は大動脈弁で90%、僧帽弁が49%、肺動脈弁が12%で三尖弁が最も少ないという結果でした。不整脈が認められた症例のうち、治療が必要である不整脈は約10%ででした。心室拡大は重度と軽度が約半数ずつでした。診断診断は、胸部のレントゲンでの心臓の大きさ、肺の状態の確認心臓超音波検査で、心臓の状態を把握超音波検査で、腹水や胸水の確認血液検査で炎症がないか、他の内臓疾患がないかを確認 これらを総合的に判断し、確定します。治療腹水や胸水、肺水腫といったうっ血性心不全兆候のある症例には強心薬を使用します。胸水が溜まり呼吸困難に陥っている場合は沈静下にて胸水の抜去を実施することもあります。腹水も呼吸の妨げになる場合は抜去しますが、急速に腹水を抜くと、血圧変動が起こる可能性があり、そのままにしておくこともあります。肺に水が溜まる肺水腫が起こっている場合は、利尿薬を使用し、肺に溜まった水を尿として排泄します。治療が必要な不整脈では抗不整脈薬や心拍数を上げる薬を使用します。実際の症例フェレット 去勢オス 6歳5ヶ月既往歴:インスリノーマ、リンパ腫、副腎腫瘍(全て確定診断はついていません)昨日から咳、過呼吸のような症状があると当院へご来院されました。今朝もゼェゼェといった呼吸は続いている様子でした。体重は880g 熱は37.8度と高くありませんでした。検査レントゲン検査では心臓が丸く張り気管が持ち上がっています。また、肺野が白くなっていることがわかりました。【レントゲン画像:正常な心臓は細長い】また、超音波検査では大動脈弁、僧帽弁、三尖弁での逆流が確認されました。【超音波画像:逆流があり、色とりどりのカラーがモザイク状に載っている】治療状態もあまり良くないことから、糖液が飲めることを確認し、強心薬を投薬しました。その後数時間で、呼吸状態も楽になり、レントゲンでも心臓の影が正常に近くなったためお薬を出して退院となりました。【レントゲン画像:心臓が扁平化し、気管の持ち上がりも緩やかになっている】経過その後も定期検診を行い、咳の様子や体調に合わせて薬剤の変更を行なっております。