FIPの詳しい内容については以前の記事「子猫のFIP」をご覧ください。今回は成猫のFIPの2症例をご紹介します。症例12歳9ヶ月の去勢ずみの雑種猫です。FIP疑いとして他院から紹介来院されました。経過11月上旬から元気が低下し、近隣の病院を受診。皮下の点滴などが行われましたが、大きく改善はありませんでした。その後検査を行い、FIPが疑わしいとのことで当院を受診する運びとなりました。当院来院時食欲はほぼなく、ちゅーるを少し食べるくらいとのことでした。診察台の上でも、意識レベルの低下が認められ、重度の脱水、呼吸促迫、白目の黄疸が認められました。治療症例の状態がかなり思わしくなかったため、飼い主様と相談し、入院下でモルヌピラビルの投薬を開始しました。全身状態の改善のために酸素室静脈点滴(肝庇護剤、糖、ビタミン添加)各種静脈注射皮下注射経鼻カテーテルによる食事の給餌などを行いました。入院3日目あたりから徐々に自分で食べ始め、5日目で退院となりました。その後もモルヌピラビルの投薬を継続しています。今ではすっかり元気になっています。症例24歳8ヶ月のオスのミヌエットです。「食欲の低下と尿の色が濃い」という相談で来院されました。「以前、膀胱結石になったことがあり、再発したかも」とのことでした。当院来院時熱は40.3度と高く、白目や口腔粘膜にも黄疸が認められました。血液検査では、FIPで特徴的な高タンパク血漿が認められました。レントゲンや超音波検査ではFIPを強く疑う所見はありませんでした。治療年末年始という時期的なこともあり、検査会社に検体を提出できないことから飼い主様と相談し、モルヌピラビルによる治療を開始しました。同時に皮下点滴、抗生剤などの投薬を実施しました。次の日には体温も37.6度まで下がりました。久しぶりにドライフードを食べたなど、体調の改善が認められました。4日間の通院の後、家でモルヌピラビルの投薬をしてもらいました。今も投薬は続いていますが、体重も徐々に元に戻り、元気に過ごしてくれています。まとめFIPは未だ完全に完治する病気とは言えません。治療がうまく行かず亡くなる猫もいますし、再発の可能性もあります。体調が良くなったからといって薬を勝手に辞めてしまうと、FIPの再発のリスクが高くなります。治療が終わってもしっかりとした経過観察が必要です。当院ではモルヌピラビルによるFIPの治療を実施しております。モルヌピラビルのメリットはなんといっても値段です。以前の薬では高額で、治療できなかった猫たちも多くいました。モルヌピラビルも決して安い薬ではありませんが、手が届く方が多いのではないかと思います。また、治療効果も以前の薬と比べて遜色ない成績を残しています。当院で治療している猫も、今のところ全頭回復しています。FIPの治療でお困りの方は、一度当院までご相談ください。