猫の特発性高カルシウム(Ca)血症は初期で発見することは難しく、健康診断の血液検査で見つかることもあります。猫の高カルシウムの原因として「特発性」は一番多く、次いで「腎臓性」「腫瘍性」の高カルシウム血症が多いとされています。そのため高カルシウムが見つかった場合は、腫瘍や腎臓病が無いかを探る必要があります。特発性とは?特発性は原因がわからない、という意味です。「現段階では」原因がわからない、という場合もありますし、「ずっと」原因不明である、という場合も含まれます。そのため、猫の一般状態や、他の検査の結果などから総合的に評価をすることが必要です。カルシウムの摂りすぎが原因?では高カルシウム血症の何が悪いのでしょうか?「カルシウムはたくさん摂取しなさい!」「イライラするなんてカルシウムが足りて無いんじゃないの?」「骨を丈夫にするにはカルシウム!」なんてことを耳にする機会もあるかと思います。しかし普通のご飯を食べている猫では、ご飯が原因で高カルシウムになることは基本的にありません。他の原因が?猫の高カルシウム血症の原因として挙げられるのは腫瘍性骨の病気腎不全副甲状(上皮小体)腺機能亢進症甲状腺機能低下症そして特発性です。副甲状腺(上皮小体)機能亢進症や甲状腺機能低下症は、猫では非常に珍しい病気です。そのため、この原因の中で特に気をつける必要があるものは腫瘍と腎臓病となります。高カルシウムの何が悪い?では高カルシウムの状態は、体にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?体のカルシウムが高い状態だと、喉の渇きから、飲水量が増える脱力元気の低下嘔吐便秘不整脈発作などがあります。しかし、「特発性の高カルシウム血症」の猫はこれらの症状を起こさないとも言われています。カルシウムと一緒にリンの数値も高い場合は、体に石灰沈着が起こります。通常は起こらない場所に石灰沈着が起こるため、体に様々な異常を来します。カルシウムの数値はどれくらいまでが正常?カルシウムの値は測定機器にもよりますが、12.0mg/dl以下が正常値です。15.0mg/dlを超える場合はほとんどの動物が症状を出し、18.0mg/dl以上では非常に重篤な状態となります。治療は?治療は原因により様々ですが、ここでは特発性の高カルシウム血症の治療についてお話します。治療は食事療法と内科療法があります。猫はご飯にこだわりが強い子もおり、食事療法が難しい場合は内科治療、つまり投薬で管理します。高繊維食サイリウムステロイド(消化管でのカルシウムの吸収を抑える)ビスフォスフォネート(骨からカルシウムが溶けることを防ぐ)などがあります。などが挙げられ、上記2つは食事療法下記2つは投薬治療です。症例症例は年齢:3歳 性別:避妊手術をしたメス種類:サイベリアン健康診断で来院され、血液検査でカルシウムの高値が認められました。(13.8mg/dl)この時点で、特に症状もなく一般状態は良好でした。1ヶ月後の再検査ではカルシウムの値が15.7mg/dlに上昇していたため、イオン化カルシウム、PTH、PTH-rpの測定を実施しました。イオン化カルシウムは1.88mmlo/dlPTHは1.0pg/ml以下PTH-rpも1.0pmol/ml未満明らかな腫瘍性病変も確認されないことから、特発性の高カルシウム血症と診断しました。高繊維食のフードに変更し、再検査を行ったところ、12.8mg/dlにまで低下しています。まとめ猫の特発性高カルシウム血症は繰り返す尿石症や健康診断で偶然見つかることも多く、カルシウムの高い値が続くと、さまざまな弊害が生じます。繰り返す尿石症や、定期的な健康診断をしていない猫はぜひ、この機会に血液検査を実施し、カルシウムにも注目してみてくださいね。