こんにちは!渋谷駅近くにあります、渋谷動物医療センターです。 今回は股関節脱臼をし、大腿骨頭切除の手術を実施した症例をご紹介します。股関節脱臼とは 股関節脱臼を起こすほとんどの動物は外傷により引き起こされます。自然に発生する股関節脱臼もあり、その場合は予後が悪いことも報告されています。治療治療には内科療法と外科療法があります。内科療法内科療法はレントゲン検査において、股関節低形成や骨折が認められない動物に対して選択されます。内科と言っても痛みを生じますので、整復は麻酔をかけて実施します。整復後は脱臼した方向にもよりますが、包帯により固定をする場合もあり、約1〜2週間は包帯をつけたままゲージレストとなります。包帯が外れた後も再脱臼に注意しながら運動制限を行う必要があります。再脱臼がある場合は観血的整復を実施します。再脱臼率は包帯を外した直後または数日のうちで43.5%という報告もあります。(Schlag AN et al:J Am Vet Med Assoc. 2019 Jun 15;254(12):1436-1440.)外科療法股関節形成不全がない場合関節包再建術:関節包の再建をすることにより安定化が望めます。大腿骨頭靭帯再建術:トグルピンを使用することにより、人工靭帯を作ります。観血的整復はインプラントによる整復があります。インプラントでの再脱臼の確率は14.8%程度と言われており、合併症は24.2%という報告があります。(Mathews ME et al :Vet Surg. 2021 Jan;50(1):142-149. )股関節形成不全がある場合大腿骨頭骨頸切除術:大腿骨頭と寛骨臼の接触を消失させ、線維により関節を形成します。他の術式で再脱臼をしてしまった場合や、他の術式と比べ比較的安価なことから選択される場合が多いです。日本では小型犬が多いことから、股関節での体重負荷も軽く、術後あまり問題になることなく過ごす症例が多いとされています。股関節全置換術:股関節全置換術は限られた施設で実施されている手術法で、股関節を人工関節に置き換えます。上記の方法は大腿骨頭切除ではあまり機能改善が見込めない大型犬に対して行われてきました。昨今ではインプラントの小型化が進み、小型犬でも実施可能です。合併症は34.5%でその中でも最も多いのが、インプラントの緩み(20%)と言われています。(Denny HR et al :J Small Anim Pract. 2018 Jun;59(6):350-356. )保存療法 があります。症例犬、トイプードル、メス5歳11ヶ月1.5kg 遊んんでいてマットがないところで転けたのち、後肢の挙上が認められたためホームドクターを受診。ホームドクターにて股関節脱臼と診断。そこでは手術不可とのことで、当院に来院しました。検査触診上、当院でも股関節の脱臼で相違ないと診断しました。【股関節脱臼した症例のレントゲン】レントゲンにより、股関節低形成が背景にあることが推察されたため、手術による大腿骨頭切除を実施いたしました。治療【写真:脱臼した大腿骨の骨が見える】【大腿骨骨頸を切除した後のレントゲン】経過手術後は一時的に筋肉量が落ち、破行(足をあまり使わない)が認められます。リハビリなどを積極的に行い、どんどん足を使っていきます。股関節脱臼は股関節周囲の筋肉などの組織への影響や関節軟骨の変性を防ぐために、なるべく早く脱臼を整復することが求められます。急に痛がり、後肢を挙上しているなどの様子があった場合はすぐに動物病院へご相談ください。