子宮内膜ポリープは卵巣ホルモンの過剰や長期的な分泌による子宮内膜の刺激により生じる病気です。子宮内膜過形成などが原因で起きるとも考えられており、犬や猫での報告があります。今回はそんな子宮のポリープについて症例を交えながら解説していきます。猫の発情メス猫は約6~9ヶ月で大人になり、性成熟します。猫の発情は日照時間が14時間を超えると起こるため、日本では春から秋が発情の季節となります。猫の発情期は発情前期、発情期、発情間期からなります。発情前期は擦り寄る頭を擦り付ける良く鳴くなどの甘える行動が見られます。この時はまだオスを受け入れることはありません。発情期になると交尾が可能です。期間は1週間前後続き、交尾をしなければ排卵は起こりません。受精が成立しない場合や交尾をしないと発情後期に入ります。発情後期は2~3週間ほど続き、この期間中は発情前期のような行動は全く見られません。この時期に、卵巣ではまた新たな卵子の卵が作られています。そして卵子の卵が育つとまた発情前期へと進みます。症状子宮内膜過形成やポリープができると陰部からの出血ポリープが大きくなることで元気の低下食欲低下などがみられることがあります。ただし、子宮内膜過形成やポリープが存在するすべての猫で症状があるわけではありませんので注意が必要です。検査・治療内膜過形成や子宮ポリープは血液検査で大きな異常が出ることは少ないとされています。画像検査は有用で、レントゲン検査では大きく発達した子宮や膀胱とは異なるしこり状のものが写る可能性があります。超音波検査では子宮や子宮内のしこりを確認できます。実際の症例5歳の未避妊、アメリカンカールが陰部からの出血を主訴に来院されました。6ヶ月齢時に避妊手術を検討し、検査を行ったところ炎症の数値が高いと指摘されそれ以降避妊手術はせずに生活をしていたとのことでした。「先月から発情しているが、出血は今回の発情が初めて」とのことでした。超音波の検査を実施したところ、子宮内にしこり状のものが確認されました。発情による子宮内膜の炎症、感染、腫瘍などを考え、飼い主様と相談し発情が終わるまで一度様子を見てみることとしました。一度出血は落ち着いたとのことでしたが、発情終了後も少量出血することはあり、子宮卵巣摘出を視野に検査を行いました。以前、指摘された炎症の数値は高くなく、レントゲン検査も問題ありませんでした。超音波検査は依然としてしこり状のものが子宮内に確認されました。発情が終わってもしこりの大きさに変化がないことから、子宮卵巣摘出手術を実施しました。【写真:発達した子宮と、子宮内部にしこりがある事が分かる】【写真:摘出した子宮】結果:子宮内膜過形成、子宮ポリープ今回の摘出により、予後は良好と考えられます。まとめ子宮卵巣の病気は避妊手術がメジャーである動物たちには珍しいですが、避妊手術をしていない動物はなんらかの性ホルモン性疾患や生殖系疾患になることが多いです。今回の症例のようなポリープであれば、手術により予後は良好と考えられますが、悪性腫瘍や子宮蓄膿症などになれば、命の危険もあります。避妊手術のメリット、デメリット含めしっかりと獣医師と話し合っていただければと思います。