こんにちは!渋谷動物医療センターです!今回は猫ちゃんの大腿骨頭すべり症という疾患の症例をご紹介します。大腿骨頭すべり症大腿骨頭は太腿の骨です。しかしすべり症とは・・・?ですよね。。。大腿骨頭すべり症は大腿骨頭骨端異形成症(形成不全)とも言われています。大腿骨頭は股関節を形成している大腿骨の一部で、骨盤の骨と接合します。その骨頭の成長板の閉鎖遅延により、軟骨肥大層の機械的脆弱を招き、離開(骨折)してしまうことを言います。 骨折というと、落下や交通事故などによる外傷により引き起こされるものと思う方が多いと思います。しかしながら、大腿骨頭すべり症の場合は慢性的かつ潜在的に発症します。疫学大腿骨頭すべり症は若齢(2歳未満)の去勢雄や肥満猫での発症が多いとされています。約60%が両側性と言われており、急性または慢性の破行を引き起こします。若齢で多い原因は成長板の存在です。成長板とは若齢期の動物で存在する軟骨をさし、成長板の存在により骨が長くなります。成長板はある程度までの月齢で閉鎖(消失)しますが、その軟骨部分は他の骨と比べると脆弱で骨折などを起こしやすいと言われています。診断 診断はレントゲン検査で可能です。しかしながら病理組織検査をせずに、外傷性の骨折かすべり症かを見極めることは困難です。治療 治療は外科的治療が選択されます。ピンによる整復、大腿骨頭切除、または股関節全置換が選択されます。股関節全置換に関しましては前回の大腿骨頭切除の症例のブログでもご紹介した通り、実施できる施設に限りがあります。ピンによる整復は骨頭を安定化することが可能で生体力学的にも優れています。慢性的な骨折や骨端異形成症の場合は血管新生と大腿骨頸部のリモデリングにより、外科的安定性が損なわれている可能性があるため、大腿骨頭切除が推奨されます。参考文献Pilar Laufurente et al:Journal of Feline Medicine and Surgery (2011) 13, 498–507 症例ベンガル 去勢雄 10ヶ月 体重3.12kg飼い主様が1時間外出しておりゲージに入れていたにも関わらず、帰宅した時には右後肢の挙上、破行が認められたとのことで来院されました。当院での身体検査、レントゲンにより大腿骨頭頸部での骨折と診断され、後日手術を行うこととなりました。検査【レントゲン:大腿骨頸部が折れ、骨頭のみが股関節にはまっている】【レントゲン:横だと少しわかりづらいが、骨折している】骨折部位から、すべり症の可能性を考え大腿骨頭切除を実施し切除した大腿骨頭の病理検査を行いました。【レントゲン:大腿骨頭切除後】結果大腿骨頭すべり症に一致する本症例の大腿骨頭の関節軟骨にはびらんが生じ、残存する軟骨組織は変性が認められる。壊死は認められないが、骨端板軟骨には変性が見られ、一部では軟骨細胞がクラスター状に集簇している(病理検査結果本文抜粋)という所見でした。 今後今後は右後肢のリハビリと、片側にも同様の症状が現れないか注意深く見ていく必要があります。術後1ヶ月はまだまだジャンプなどもおぼつかない状況でしたが、2ヶ月をすぎた頃からは高いところにものぼるようになり、3ヶ月経つ頃には注意してみないと左右差はないとのことでした。 猫ちゃんの破行でお困りでしたら、渋谷動物医療センターにご相談ください。