こんにちは!渋谷区にあります、渋谷動物医療センターです。今日は脾臓腫瘤が認められ、その腫瘤が血管肉腫だったわんちゃんの症例をご紹介します。血管肉腫ここで血管肉腫について少しご説明いたします。脾臓の腫瘤は30%が悪性、その悪性の2/3が血管肉腫だと言われています。少し前までは2/3が悪性、その悪性のうち2/3が血管肉腫と言われていました。 血管肉腫は80%の犬で肝臓へ転移します。また、心臓の右心耳にも15-25%転移すると言われています。脳転移率も高いと言われており、そのた肺や大網、腸管膜、皮膚、筋肉にも転移します。また、DIC(播種性血管内凝固症候群)が起こってしまう可能性が高く、多臓器不全に陥ります。脾臓腫瘤は不整脈が起こる可能性も示唆されており、その原因はDICや貧血、循環血液量減少性のショックのためと言われています。 ステージ脾臓の腫瘍の直径が5cm未満で、癌発部位に限局しており、リンパ節やその他臓器に転移していない場合をステージ1腫瘍が5cm以上または破裂、局所リンパ節の腫張が認められた場合はステージ2腫瘍が近隣組織に浸潤している場合や局所以外のリンパ節も腫張している、または遠隔臓器に転移が認められた場合はステージ3となり、治療摘出後は基本的に抗がん剤などの化学療法を実施します。予後 それぞれ摘出+抗がん剤をした場合の予後はステージ1の場合 275-345日ステージ2の場合 93-210日ステージ3の場合 68-136日 と言われています。症例ヨークシャテリア 避妊メス 11歳3kg既往歴:僧帽弁閉鎖不全症、乳腺腫瘍(摘出済)経過他院で発熱、白血球である好中球の減少が認められたため、全身精査を行ったところ脾臓に腫瘍が認められました。当院でも精査を希望され、検査を実施したところ、脾臓に16.8mm×27.4mmの腫瘍が確認出来ました。脾臓の腫瘍は血管肉腫やその他の肉腫、リンパ腫やその他の腫瘍の転移などの悪性のものから過形成、血腫、脂肪腫などの良性腫瘍まで、さまざまです。基本的には脾臓を摘出し、病理組織検査をするまで正しい診断を下すことは難しく、腫瘍の大きさでも悪性良性を判断することが難しいとされています。血液検査では大きな異常はありませんでした。治療飼い主様と相談の結果、当院にて脾臓摘出を実施しました。結果血管肉腫【画像:腫瘍の病理組織】今後この症例は明らかな転移は認められないこと、また抗がん剤を実施したのちの注意すべきことが多頭飼育でかなり難しいことから抗がん剤の実施はしておりません。今現在元気、食欲もあり良好な経過を辿っています。やはり何事も早期発見、早期治療により延命が望めます。超音波の検査は健康診断でもあまりすることがありません。高齢の子であれば腹部超音波の検査も是非一度ご検討ください。