みなさま、尿道閉塞という言葉を聞いたことがありますか?「最近お家の猫がトイレに何度も行く」「トイレに行くけど、出ている様子がない」「血尿をポタポタしている」これらに思い当たる節がある場合は、家の猫は尿道が閉塞しているかもしれません。雄猫の尿道は狭く、詰まってしまうことが多々あります。気づくのが早ければ良いですが、丸1日おしっこが出ない場合はかなり危険です。今回は尿道閉塞を起こした猫の症例を紹介します。尿道閉塞の原因は?尿道閉塞の原因として最も多いのが、結石・結晶です。結石はストルバイト結晶やシュウ酸カルシウム結晶が多いとされています。その他血の塊炎症産物腫瘍腫れミネラルなどが挙げられます。尿道閉塞してどれくらい時間経ったら危険?排尿姿勢を何度もとる場合や、頻回トイレに行く場合は異常といえます。その他の症状には排尿痛血尿があります。しかし、緊急性があるかどうかは分かりづらいものです。閉塞を起こして約1日で腎臓にダメージが起こります。その時は食欲の低下元気の低下嘔吐下痢虚脱痙攣などが起こる危険性があります。検査尿道が細い雄猫であることやお腹を触り、かなり大きく張った膀胱が触知されれば尿道閉塞を疑います。閉塞を解除したのち、血液検査で腎臓や体の状態を把握し、尿検査で閉塞が起こった原因を調べます。治療治療は腫れた尿道を使用しないように、カテーテルを数日間設置します。その間に尿道が閉塞した原因の治療を行います。例えば、ストルバイト結晶が原因であればご飯により結晶を溶かし、細菌性の膀胱炎が起こっている場合は抗生剤を使用します。また、排尿を促すためにも点滴を行います。何度も繰り返してしまう尿道閉塞の症例は外科的な処置が必要である場合もあります。実際の症例症例12歳、去勢済みの雑種猫昨日からご飯を食べなくなり、水もチュールも口にしないとのことで夜間救急で来院しました。診察台の上でもぐったりしている様子でした。多頭飼育のため、排尿状況などは把握できていないとのことでした。触診では腹腔内に握り拳大の硬いものが触れ、膀胱の可能性があると考えられました。超音波検査ではパンパンに大きくなった膀胱が確認できました。【超音波画像:尿でパンパンになった膀胱】閉塞を解除し、尿検査を実施したところ、赤血球、細胞が確認され、結晶は見当たりませんでした。【顕微鏡画像:赤血球と、中央上、下に細胞が確認できる】血液検査ではBUN、Creといった腎数値が287mg/dl、20.47mg/dlまで上昇し(正常値:BUN 17.6~32.8mg/dl Cre 0.9〜2.1mg/dl)、Kが8.1mEq/L(正常値 3.4〜4.6mEq/L)、Pが22mg/dl(正常値 mg/dl)まで上昇していました。閉塞の解除、点滴を行うことでKは下がり、次の日にはBUN 、Cre、Pも下がりつつありました。飼い主様の希望により、ホームドクターでの治療を継続してもらうことになりました。症例24歳の去勢済みのブリティッシュショートヘアが「昼から血尿している、トイレに何度も行く様子がある」と来院されました。触診では腹部に野球ボール大のしこりが触れ、陰部は出血の跡がありました。超音波検査で、しこりは膀胱であると確認されたため、尿道閉塞解除を行いました。尿検査ではストルバイト結晶が確認されました。【顕微鏡画像:多くの結晶が確認できる】血液検査ではBUNが83.6mg/dl、Creが5.56mg/dl、Pが7.1mg/dlと高値でした。入院下で、尿をカテーテルで管理し、点滴を行いました。次の日にはBUN 、Creは正常値まで戻っており、血尿も徐々に落ち着きました。ご飯はストルバイトを溶かすご飯に変更し、家でもご飯と飲水量をしっかり管理していただいています。まとめ今回の2症例でも分かるように、時間経過が長いほど、腎臓や全身へのダメージは強くなります。日々の排尿のチェックはもちろん、食欲などにも注目してみてくださいね。また、最近では尿に少しの血液が混ざっただけでも色が変わるトイレ砂や、ペットシーツがあります。膀胱炎になった猫は繰り返すことも多いと言われています。こういった物を使いつつ、早めに気づいて治療していけるといいかと思います。