こんにちは!渋谷区にあります渋谷動物医療センターです🏥昨今、FIPの新しい治療薬として『モルヌピラビル』の効果が報告されました。今日はそんな新薬を使用してみた成猫のFIPの症例をご紹介します。FIPにつきましては子猫のFIP/猫伝染性腹膜炎に記載がありますので、ご興味のある方は是非ご一読ください!症例猫 マンチカン2歳2ヶ月 去勢雄既往歴:なし元気、食欲の低下、呼吸が荒いとのことで来院されました。検査身体検査では可視粘膜の蒼白が認められました。血液検査では貧血(Hct:12.2% )肝数値上昇(GPT:403U/L GOT:383U/L)総蛋白のやや上昇(TP:8.1)アルブミンの低下(ALB:2.3)が認められました。レントゲン検査では肺野の不透過性の亢進、心拡大が認められ【胸部レントゲン:心拡大と肺野の不透過性が見られる】腹部レントゲンでは腎陰影の拡大が認められました。【腹部レントゲン:腎陰影の拡大が認められる。仰向けのレントゲンは右腎は消化管に隠れて不明瞭】超音波検査では、心臓壁の厚みの増加(6.5mm)微量な腹水の貯留、腎拡大、胆嚢拡張、リンパ節の腫大が認められました。【超音波:左の黒い領域は胆嚢。小さく黒く抜けている部分は腹水。】腹水を抜去し性状を検査したところ、TP5.5 比重1.030 と滲出液(炎症による腹水)と確認できました。また、腹水と腫大した腎臓、リンパ節の組織液を外部検査センターに検査依頼しました。結果FIP陽性治療FIPが陽性であったためモルヌピラビルを使用し治療を行いました。経過治療から約1週間後には状態の改善が認められ、2週間後には調子が良いとのことでした。体重 2.7→3.5kg血液検査上でも貧血の改善が認められ(Hct:12.2→33.9%)その他異常値も改善しました。(GPT:403→46U/L. GOT:383→15U/L. TP8.1→7.5g/dl. ALB:2.3→3.2g/dL)また腎腫大も改善傾向で(45.7mm→40.7mm)腹水も消失しております。ご家族様にとって頂いたお写真でも違いは歴然です。左はFIPの治療初期でぶどう膜炎により黒目が散瞳しており、目の黄色も強いです。右はFIP治療中期です。瞳孔がしっかり縮瞳するようになり、目の黄色も落ち着いて元の色に戻っております。モルヌピラビルは新しい薬であり、動物に対する使用がまだ検討され始めたばかりです。しかし以前のブログにも書いた通りFIPの致死率は高く、早急な薬の開発が求められていました。今後も使用症例を増やしつつ、治療できればと思います。以下に近年使用されているFIP薬の比較を一覧にしておきます。なおMUTIANに関しましては諸事情により製造中止しておりますので記載はありません。FIPの治療にお困りの方は当院にご相談ください。