うさぎの心臓病には、人と同じように高齢になって出てくる心臓病と、先天的な心臓病があります。この先天的な心臓病で多いと言われているのが、心室中隔欠損と言われている病気です。「最近、ご飯の食べが悪いなぁ。また鬱滞かしら?」「なんとなく呼吸回数が多い気がするけど、こんなものかな?」と思われているうさぎの飼い主様も多いかと思います。うさぎの食べない原因は胃腸の鬱滞や口腔内トラブルであることが多いです。しかし、中には重大な心臓病が隠されてる場合もあります。今回はそんな先天的な心臓病である、心室中隔欠損について実際の症例を交えながら解説してきます。心室中隔欠損とはうさぎの心臓の先天性疾患の中では一番多い病気です。心室中隔欠損とは、左右の心室を分ける中隔という壁に穴が生じる病気です。穴がない場合は、心臓は正常なルートを流れていきますが、この穴のせいで、血液は左から右の心室に流れてしまいます。右の心室に行った血液は肺にいき、また左側の心臓に戻ってきます。右心室に行く血液量が多くなると、肺に行く血液が多くなり肺高血圧という病態に進みます。肺は血液中の二酸化炭素を酸素と交換する役割を果たしています。動物は、人間やうさぎも含め、酸素がないと生きていけません。肺高血圧に病態が進んでしまうと、血管の弾力性が失われ肺に行く血液の量が減ってしまいます。しかし、心臓は肺に血液を送るために一生懸命になります。そうすると心臓への負担もまた増えてしまうという悪循環になります。最初のうちは、左心室から右心室へと血液が流れますが、病気が進行すると右心室から左心室へと血液が流れます。右心室の血液は、肺で酸素を取り込む前の血液です。それが左心室に行き、全身に血液が巡って行きますが、酸素のない血液なので体は低酸素状態になります。うさぎの心室中隔欠損の症状初期の頃はとくに目立った症状は出ません。普通のうさぎと同じように生活できますし、食事もできます。肺高血圧になってくると活動性の低下呼吸が早い食欲の低下痩せてきた突然死などが起こります。心室中隔欠損の治療法は?うさぎの心室中隔欠損の治療はまだ確立されていません。心室中隔欠損の手術報告は、実験のみで、実際の患者様での実施報告はありません。うさぎの心室中隔欠損は見つかった段階で、非常に進行していることが多いです。そのため、仮に手術ができるとしても、手術に耐えうる体力なども乏しい場合が多いでしょう。多くの場合は症状の緩和のために内科治療を実施します。治療内容は、心臓の負担を減らすことや肺の苦しさを取り除くことです。うさぎはお薬が苦手な子も多いため、投薬がストレスになる事もあります。呼吸が苦しい場合は、酸素室などを利用する事もあります。酸素室があると21%の通常の酸素濃度よりも、高い酸素での維持が可能です。動物病院で相談してみてくださいね。実際の症例症例は3歳4ヶ月のホーランドロップです。数日前から食欲がなく、今朝からはほぼ何も食べていないとのことでご来院されました。当日は、聴診でも問題もなく、呼吸状態もそれほど悪い状況ではありませんでした。うさぎに多い消化管の鬱滞を考え、皮下点滴と注射を行いました。次の日も、食欲の回復がないとのことで来院されました。レントゲン検査を実施したところ、消化管には多少のガスがあるものの、過剰なガスの貯留はなさそうでした。レントゲンに写った胸の写真では、心臓の拡大が確認されました。同日、心臓の超音波検査を実施しました。心臓の超音波検査で、心室中隔の一部欠損が認められ、血液が左心室から右心室へと漏れているのがわかりました。この症例は、投薬などのストレスなどにより食欲が低下や呼吸状態の悪化がありました。食欲増進剤などで、食欲の回復などがみられましたが、治療開始から24日後に亡くなりました。まとめいかがでしたでしょうか?うさぎの心室中隔欠損の初期症状は特になく、早期発見が難しい病気です。症状が出てからの治療はさらにコントロールが難しく、投薬も大変です。少しでも、しんどいと感じる時間が短いように、一緒に治療を頑張りましょう。