犬の骨折は橈骨、尺骨という前足の肘よりも手側の部分で多く、好発犬種はトイプードルを含む小型犬種やミニチュアピンシャー、イタリアングレーハウンドなど、長細い足の骨格を有している犬種です。活発な若齢犬での発生が多いとされており、日常の診療でもその傾向が強いと感じています。さて、今日はそんな橈尺骨の骨折をした症例に遭遇しましたので、紹介します。骨折するとどういう症状が出る?骨折時は何かしらの衝撃が加わることで起こりますので、多くはキャン!と鳴いたあと、骨折した足を挙げることが多いです。そしてその足を触れられることを極端に嫌がり、時には噛み付いてしまう子もいますので、ご注意ください。衝撃の程度にもよりますが、交通事故などで骨折した場合は、他の場所も折れている可能性があり、内臓も損傷していることもあるため早急に病院へ受診してください。ソファからジャンプした、飼い主様の膝から降りたら骨折したなど、状況の確認や衝撃の程度などがわかっている場合は命に危険があることは少ないですが、しっかりと病院で検査してもらいましょう。検査・治療は?骨折はレントゲンで診断可能の場合が多いです。しかし、関節内の骨折などは複雑で、正確な評価のためにCT検査を行う場合もあります。治療の選択肢を知ろう!治療には外固定隋内ピン法創外固定法プレート固定法があります。外固定は腕の外側から固定をして骨がずれないように動きを制限します。メリットは麻酔をかけずに固定できる、限られた範囲での骨折では比較的満足のいく管理が可能と言うことです。デメリットは骨折部が安定しない危険性があり、動物の動きや筋肉・腱の不安定性により向き不向きがあることです。基本的には麻酔をかけて骨折部の整復をすることが推奨されます。髄内ピン法は橈尺骨の骨折では、それだけでの固定は難しいとされています。しかし、骨折への補助的な治療としては有用です。創外固定法は一般的に適応される機会は少ないですが、粉砕骨折や開放骨折時に適応されます。プレート固定はほとんどの橈尺骨骨折に適応可能で、骨にかかる力に対して優れた保護能力があります。【写真:イメージ ✳︎当院とは関係ありません】症例メスの1歳のスタンダードプードル『原因は不明だが、左の前足を挙げていた。3週間ほど外固定をしていたがまだ足はつけない』とのことで当院に来院されました。検査レントゲンの検査で橈尺骨の骨折が確認されました。治療飼い主様と相談し、プレートによる固定を実施しました。経過経過は非常に良好で、抜糸時の骨の様子も問題ありませんでした。まとめ骨折は適切な治療により治癒が可能な病気です。しかし、プレートの強度が強すぎると骨が弱くなり、弱すぎるとプレートの破損に繋がります。定期的な検診をし、プレートを抜去する場合もありますので術後もしっかりと診ていきましょうね。