蛋白漏出性腎症とは蛋白漏出性腎症とは尿中に蛋白質が漏れ出る疾患です。猫では非常に稀な疾患です。尿中に蛋白が漏れ出る原因には腎前性 :血中のタンパク濃度が上がる(膵炎や腫瘍、胆管肝炎など)腎性 :腎臓に問題があり血中の蛋白質が腎臓から漏れる腎後性 :尿管や膀胱、尿道の腫瘍や炎症により蛋白質が検知される蛋白漏出性腎症の原因は腎性であり、尿中の蛋白質が2~4週以上、2,3回の検査で持続して高いことで診断します。腎臓にはネフロンという構造があり、ネフロンは糸球体と尿細管、間質からなります。糸球体にはサイズバリア・チャージバリアがあり、血中から尿中に排泄するものを選択できます。たまたま糸球体から濾過されてしまった蛋白は尿細管で再吸収されます。猫の蛋白漏出性腎症は約7割が糸球体が原因であるとされ、残りの2割が尿細管1割がその他という結果でした。また、糸球体と尿細管ではある程度の疫学的な差や検査結果の差も出ており、どちらの可能性が高いかも推察することが可能です。腎臓生検を実施することで病理学的に診断をつけることも可能です。原因糸球体疾患が起こる原因としては免疫複合体糸球体腎炎(感染・炎症・腫瘍・特発性)糸球体硬化症(特発性・高血圧)アミロイドーシス が多く尿細管に問題が起こる原因は急性尿細管壊死中毒腎炎 などがあります。ステージ分類ステージ1:蛋白尿が出ている その他の血液検査や尿検査では大きな問題なしステージ2:蛋白尿が出ている 低アルブミン 高コレステロールが認められる 高窒素血漿や多飲多尿は見られないステージ3:蛋白尿が出ている 低アルブミン、高コレステロール 高窒素血漿が認められる 多飲多尿は見られないステージ4:蛋白尿が出ている 低アルブミン 高コレステロール 高窒素血漿が認められる 尿比重も下がり、多飲多尿が見られる 嘔吐や体重減少がある。合併症蛋白漏出性腎症の合併症は高血圧血栓ネフローゼ症候群(浮腫・腹水 など)予後猫58頭の蛋白漏出性腎症診断がついてからの生存期間中央値94日(3~1848日)・抗炎症薬を使用した場合 244日 1年生存率 40%・抗炎症薬を使用していない場合 17日 1年生存率0%別の報告猫24頭の蛋白漏出性腎症・11頭が1ヶ月以内に死亡・4頭が4~10ヶ月生存・8頭が2~6年生存治療治療には標準治療と糸球体疾患の種類ごとに実施する治療があります。標準治療:腎臓から蛋白を漏出させないことを目標にします。 ・低蛋白食(腎臓病食) ・降圧剤 ・合併症に即した治療糸球体疾患ごとの治療:抗炎症(免疫抑制療法)症例猫 サイベリアン去勢 3歳6ヶ月以前聴取されていた心臓の雑音の精査もかねて、秋の健康診断を実施しました。検査血圧、便検査、レントゲン検査、腹部超音波の検査では特筆初見はありませんでした。心臓の超音波検査では心室中隔壁がやや肥大しており、肥大型心筋症と診断しましたが、かなり初期段階ということで経過観察としました。血液検査ではコレステロールのみ681mg/dlと高値でした。尿検査でWBC3+尿蛋白が3+(試験紙)、顕微鏡上無晶性リン酸塩が確認されました。UPCを外注したところ、3.39 という結果でした。(基準値 0.4以下)再度別日に尿検査を実施しました。前回と変わらず、WBC3+ 蛋白も3+ その他尿比重やRBCなどは問題ありませんでした。無性性リン酸塩も確認されませんでした。UPCは 1.96 という結果で、持続して蛋白尿が出ていることが示唆されました。経過その後、腎生検も視野に入れた相談のため、大学病院(日本獣医生命科学大学附属動物医療センター/腎泌尿器科)を紹介し、受診をお願いしました。大学病院での検査でもUPCの高値は認められましたが、UPC値はさらに下がっている(1.28)ことから、一過性の糸球体腎炎の可能性もあるとして半年後に再度検査となったとのことでした。