こんにちは!渋谷動物医療センターです。今日は犬の唾液腺がんの症例をご報告いたします。 唾液腺がんとは唾液腺の原発腫瘍は犬猫では稀とされています。犬で報告されている唾液腺腫瘍のほとんどは高齢動物(10~12歳以上)に発生し、好発品種や性別による差は認められていません。症状食欲不振食べたご飯を飲み込めない首しこりができた口臭の悪化呼吸困難 など症例ラブラドールレトリーバー 去勢雄11歳9ヶ月既往歴:皮膚炎、外耳炎、耳血腫 後肢の虚脱(ふらつき)、食欲不振、触ると痛がるなどを主訴に来院されました。検査レントゲンにて胸椎体の変性、腰椎、尾椎に渡る変性が認められ、また肺に不透過性の腫瘤状陰影が数個確認できました。血液検査、心臓超音波検査、腹部超音波検査では大きな異常は見当たりませんでした。↑レントゲン時の犬の心臓肺の腫瘤状陰影が何であるかを診断するために細胞診を実施。結果は上皮性の悪性腫瘍の可能性があるとのこと。さらなる精査のためにCT撮影をしていただきました。【CT検査での唾液腺(白い部分が石灰化部)】CT所見から、左下顎線の石灰化が認められその場所の腫瘍が疑わしいとのことでした。【CT画像での肺転移】また、肺にも多数の結節が確認されており、上記の結果から、下顎腺を原発とした肺転移が一番に疑われました。後日、確定診断のために当院にて組織生検を実施。結果結果は 『唾液腺がん』 でした。飼い主様とお話しし、抗がん剤を使用をしていくこととなりました。(もちろん転移がない場合は手術による摘出が一番です)✳︎犬の唾液腺癌の手術および放射線治療による生存中央値は550日であり、積極的な局所治療が予後をよくします。不完全切除は再発を招きます。犬では遠隔転移症例の予後が不良とされ、診断時、リンパ節転移率は17%(所属リンパ節の記載なし)、遠隔転移率は8%(臓器記載なし)と報告されています。治療残念ながら、犬の唾液腺癌に対する化学療法の効果は証明されていません。が、上皮系の悪性腫瘍に効果のある抗がん剤として知られているものはありそちらの提案をいたしました。また、近年報告が増えてきているトセラニブという分子標的薬についてもお話しし、分子標的薬であるトセラニブとCOX-2阻害薬を併用して治療していくこととしました。経過経過としては分子標的薬やCOX2阻害薬が非常によく効いてくれ、肺の腫瘍(転移病巣)の縮小が認められています。(唾液腺はそもそも左右差がなく、大きさの縮小が不明であることから今回の薬剤の効果としての評価には適さないと判断しました。)今後は副作用が出ないように見ていく必要がありますが、このままの治療を継続していく予定です。