口蓋裂とは比較的よく診られる先天性異常の一つであり、軟口蓋(上顎の奥)あるいは硬口蓋(上顎の前側)またはその両方が閉鎖していない状態を指します。猫ではアビシニアンでの発生が多いとされています。今日はそんな口蓋裂を症例を交えながら紹介していきます。口蓋裂を詳しく説明!口蓋裂と決まるのはいつなのでしょうか?それは胎児期です。妊娠25~28日くらいが上顎を形成する時期だと言われており、口蓋裂の発生もこの時期だと言われています。つまり口蓋裂の猫は生まれてからずっと口蓋裂であるため、食餌中にくしゃみをしたり、飲んでいるミルクが鼻から出てくるといった症状が見られます。原因は?原因として挙げられているものは遺伝栄養ステロイドホルモン子宮の外傷環境(ウイルス感染なども含む)などがあります。特にステロイドホルモンは、マウスの実験によりほとんどの胎児に口蓋裂の発生が見られたことから、妊娠中の使用は慎重を期すことが大切です。また猫汎白血球減少症ウイルスも催奇形性があるとされているため、妊娠中のワクチン接種は推奨されません。ミルクの逆流は鼻水や鼻炎、咳を起こすきっかけになることもあり、それらが気道や肺に入ることで誤嚥性肺炎や気管支炎などを引き起こします。手術はすぐできる?口蓋裂の治療方法は外科手術のみです。手術の時期は6〜8週齢、8〜12週齢を推奨する報告があります。いずれにせよ、そこまでの成長を待つ必要があり、手術可能な時期になるまでは、チューブなどによる給餌が必要となります。手術後はどうするの?術後は裂けている場所を縫合しているため、その塗った糸が切れないかを確認する必要があります。また、口腔内は清潔な場所とはいえないため、感染の予防も大切となります。術前、術後は体の形成に必要な栄養をしっかりと摂る時期であるため、十分な栄養を維持する必要があります。ドライフードなどは1~2ヶ月程度避け、2週間前後は流動食を主体とします。実際の症例2ヶ月のシャルトリューの男の子がワクチンと鼻が鳴るとのことで当院に来院されました。身体検査では上顎に一筋のラインが見えました。この症例では完全な鼻との開通はなさそうとのことでしたので、鼻の音は仔猫によくある猫カゼとして治療しております。まとめ昨今ではペットショップやブリーダーさんのところでの獣医師によるしっかりとした診察が入り、一般的な家庭で飼育されている子で見られることはかなり稀になりました。しかし、お家で生まれた子やブリーダーさんの家庭で生まれる子の中にはこういった子もいます。しっかりと治療をすることで、誤嚥性肺炎や感染症を防ぐことができます。生まれたての子が鼻からミルクが出るなどの症状があれば、早めにご相談くださいね。