猫は基本的にお口を開けて呼吸をしない生き物です。多少の運動や暑さでは、ワンちゃんのように口を開けて呼吸をすることはありません。過度な緊張・運動を除いて、お口を開けて呼吸をしてしまうことには何かしらの原因がある場合が多く、その中には心臓病や肺の病気など怖い病気の可能性もあります。今日はワクチンのアレルギーや心臓病により、苦しくなってしまった猫の症例をご紹介しつつ、猫の喘息、心臓病の解説をしていきます。猫が口呼吸をする原因猫が口呼吸をする理由には様々あります。激しい運動をした後、過度な緊張、ストレス、苦しい時に起こることもあります。危険なのが、苦しい時にお口を開けて呼吸をしている状態です。その原因は様々で、喘息胸水が胸に溜まっている心臓病腫瘍などによる気道の閉塞などがあります。猫の喘息猫の喘息はアレルギーが関与しているとされており、アレルギー物質の暴露後数分で起こるタイプと、数時間後に起こるタイプに分かれます。アレルギーの原因はダニや花粉、食事やタバコの煙、お香、香水など様々な可能性があると言われています。また、ストレスもその引き金になることがあるとされており、猫の喘息は明らかな原因が不明なこともあります。アレルギー反応が起こると、気道が狭くなり、発作性の呼吸困難が起こります。しかし、くしゃみや鼻水、など、風邪のような症状の場合もあり、発見が遅れることも多々あります。猫の心臓病とは?猫は一般的に肥大型心筋症が最も多いとされています。肥大型心筋症とは、心筋の細胞の病気で、心臓細胞が大きくなり、心臓の内容積が少なくなります。つまり、心臓の壁が分厚くなることで、心臓に溜まる血液が少なくなってしまいます。症状は元気がないじっとしている食欲がないなど、あまり特徴的とは言えず、この病態で口を開けて呼吸をしている場合はかなりの末期と言えます。喘息と違い、咳の症状はあまり見られません。何か応急処置はできる?まずは猫が興奮しない環境に置くことです。そしてなるべく早めに病院へ連絡しましょう。特に猫ちゃんの開口呼吸は命の危険があります。お家に登山用やスポーツ用の酸素ボンベがあれば病院への移動中に使用してください。❇︎ただし、酸素ボンベは使用すると大きい音が出ます。音に敏感な猫の周りでは使用しないようにしてください。症例症例は14歳の避妊済みのラグドールです。「午前中に家の近くの病院でワクチンを接種し、夜に咳をした。呼吸が荒く、苦しそうで、口を開けて呼吸をしている」と夜間救急に来院されました。既往歴に喘息があるとのことでした。来院時の呼吸回数は1分間に144回でした。(正常の呼吸回数:1分間に20〜40回前後)飼い主様のお話から、まずはアレルギーも視野にステロイドや抗アレルギー薬の投与を行いました。酸素を嗅がせながら、ある程度落ち着いたところでレントゲン、血液検査、超音波検査を行いました。【胸のレントゲン:呼吸が苦しいため胃に空気が入っている・肺も綿毛のように白い】【心臓の超音波画像:心筋が厚くなり、心臓の内腔が狭い】 その後心臓の負担を減らす目的で利尿薬を投与し、来院時から1時間半で呼吸回数は1分間に約36回まで落ち着きました。夜間の間、酸素室で安静にしていただき、その後の治療はホームドクターにて行っていただくこととなりました。まとめ今回の症例は緊急症例であったため、元の病気やその後の経過については追えていませんが、喘息やアレルギーは呼吸困難を起こす可能性があります。お家の猫ちゃんがお口を開けて呼吸をしている際は、どういった環境で起こっているのか(ストレス下・運動の後)を冷静に見極めていただき、危険な場合はすぐに動物病院へご相談ください。