おうちのワンちゃんは冬になると途端にフケっぽくなったりしませんか?人と同じで、ワンちゃんたちも乾燥によりフケ感が出てくることがあります。さて、そんな時は人と同じで保湿剤をつけると良いのでしょうか?今日はそんなワンちゃんの乾燥によるフケに対してどうすれば良いのか考えていければと思います。そもそもなんでフケが出るの?健康的な皮膚は皮膚の細胞も均一で、角化細胞や脂質も整っています。さらにその上には皮脂膜があり、常在菌などの侵入から皮膚を守っています。この角質層と皮脂膜が、いわゆるスキンバリアと言われ、スキンバリアが崩れたり、皮膚の栄養が足りなくなると、脱毛・フケ・かゆみの原因になります。皮膚と毛を構成するには、外側のスキンケアと内側のスキンケアが大事です。外側のスキンケアはシャンプーやトリートメント、保湿剤などを行います。内側のスキンケアは普段の食餌やサプリメントで実施します。選択すべきシャンプー剤は?外側のスキンケア!スキンバリアが崩れているなんて、どのようにすればわかるのでしょうか?実はスキンバリアが崩れているかどうかは「経表皮水分蒸発散量」でわかります。皮膚からの水分が蒸発する量が多ければ多いほど、スキンバリアが崩れているのです。しかし、これは特殊な器械が必要であるため、測定できる病院は少ないでしょう。簡単に測定できないからこそ、しっかりと補っていく必要があります。何を補いましょうか?それは「セラミド」です。セラミドは細胞間脂質と言われ、角質層の角化細胞の間に存在しています。このセラミドが十分存在することで、体表からの水分の蒸発を防ぐことができます。皮膚のトラブルの原因は、アトピーやアレルギー、膿皮症などの感染症はもちろん、乾燥や、摩擦による刺激、洗いのこしなどがあります。洗浄力の低いシャンプーは汚れが残ってしまう可能性も高まります。十分な洗浄力を兼ね備えつつ、刺激の低い肌のバリア機能を傷つけないシャンプー剤が理想的と言えます。日常ケアのシャンプーであれば、セラミドやアミノ酸が配合されたもの、石油系界面活性剤が入っていないものがおすすめです。ご飯は内側のスキンケアに!実は食べるご飯も皮膚、被毛にはかなり大事です。ご飯の中でも大事なのがタンパク質と良質な脂です。犬はなんと摂取したタンパク質の約30%が皮膚や被毛に使用されます。そのため、低栄養状態・飢餓状態・低タンパク食では皮膚や被毛に十分な栄養が行きません。皮膚に必要な栄養素はタンパク質ビタミン必須脂肪酸(リノール酸、DHA、EPAなど)亜鉛です。これらが不足すると、タンパク質の不足が、毛周期の休止期へ移行し脱毛を起こしEPA、DHAなどを含むオメガ3やオメガ6などの必須脂肪酸の不足が脱毛や皮膚の乾燥、フケ、脂漏などを起こします。ビタミン・亜鉛不足は角化異常(フケ)を起こします。必須脂肪酸の中にはリノール酸という物質も含まれます。このリノール酸は体内でセラミドに変わり、体の内側からスキンバリアを形成することが可能となります。保湿剤は効果的?シャンプーにも気を使い、ご飯も変更した。「もう十分でしょう?」「他にできることなんてあるの?」なんて思われるかもしれません。実は保湿剤の使用も効果的です。健康なワンちゃんのシャンプーの頻度は多くて週一回、トリミングサロンで月一回の子も多いはず。もちろん使用していただくシャンプーに気を遣っていただくことで、フケを出しにくくすることは可能です。しかし、今フケがたくさん出ているワンちゃんはそれだけでは不十分である可能性があります。また、ご飯は持病があって変更できない子もいます。そんな子たちはぜひ、家で使用できる保湿剤をお勧めします。保湿剤は塗るタイプではなく、浸透していくタイプをお勧めします。理由は、ワンちゃんたちには通常毛があり、塗るタイプの保湿剤ではどこまで皮膚に浸透しているのかがわかりにくいからです。おすすめはピペットタイプのもので、地肌に垂らすと全身に広がる素材のものが良いと思います。成分内容は必須脂肪酸や抗酸化作用のあるビタミンが添加されているものが良いでしょう。他の病気の可能性は?もちろん他の皮膚炎でもフケが出ることはあります。例えば皮膚糸状菌です。こちらも脱毛とフケっぽい感じがあります。また膿皮症もフケや瘡蓋っぽくなることがあります。皮膚に寄生虫が繁殖することでもフケっぽくなることがあります。ニキビダニは通常の犬の皮膚にもいますが、数が増えることでトラブルを引き起こします。疥癬症というダニの寄生でも強い痒みと共にフケが出ることがあります。何も感染だけではありません。アトピーやアレルギーでもフケが出ることがあります。つまり皮膚炎が起こると、フケは出てしまうということですね。注意が必要なのは、皮膚だけの問題ではないということです。食べたご飯をうまく吸収できない病気でもフケっぽくなることもあります。例えば、クッシンング症候群や肝硬変、糖尿病などがあり、これらの疾患があると皮膚にも影響が出ます。実際の症例2歳の雄のポメラニアンです。当院のトリミングサロンを利用した際に脇、背中、腹部の皮膚の赤み、フケについてトリマーからの相談がありました。感染症の検査を行ったところ、脇には少し菌が確認されました。その他の部位には菌や寄生虫、糸状菌の感染も否定的でした。腹部や背中は乾燥などによるものと判断し、脇は乾燥から感染症を起こしていると判断しました。治療として、最初に薬用シャンプーで菌を洗い落とし、乾燥を防ぐためにトリミング時に保湿力の強いパックを実施しました。その後、デルモセント エッセンシャル6 ピペットの保湿剤の使用とご飯をロイヤルカナンのスキンケアフードに変更しました。約2ヶ月後には脇、背中、腹部の赤みや脱毛、フケ感も無くなりました。今もフードは継続していただいています。まとめフケは飼い主様もよく聞くワードかと思いますが、実際どうして治していくのがいいかを理解するのは少し大変です。この記事がフケで悩んでいるワンちゃんや飼い主様のお役に立てば幸いです。