膀胱の移行上皮癌は、血尿や頻尿などを引き起こします。「最近、トイレによく入る行動を見かける」「尿の色が普段よりも濃い」「血尿をしている」などを理由に、飼い主様が病院に来られます。今回は、移行上皮癌について解説していきます。膀胱炎の症状とあまり変わらないため、検査をしてみると進行していることも多々あります。気になる方はぜひチェックしてくださいね。猫の膀胱移行上皮癌とは膀胱の移行上皮癌とは膀胱の上皮から発生する腫瘍です。猫の膀胱移行上皮眼は犬の移行上皮眼よりも悪いと言われています。発症年齢は15歳前後と高齢で見られます。発生部位は膀胱の先端や、尿管と膀胱が繋がっている部分に多いです。シャムやアビシニアンなどでの発生が多いと言われていますが、他の猫種でも発生します。雌雄差は特にありません。膀胱移行上皮癌の症状症状は特徴的です。血尿頻尿排尿痛が多く見られます。ただし、膀胱炎や膀胱結石でも同様の症状が見られます。猫の膀胱移行上皮癌の治療治療には内科療法と外科療法があります。内科療法抗がん剤、非ステロイド性消炎鎮痛剤の使用があります。抗がん剤は以下のものが使用されます。カルボプラチンドキソルビシン非ステロイド性消炎鎮痛剤は移行上皮癌に効果的であるとわかっており、こちらも積極的に使用されます。最近では分子標的薬の使用も検討されていますが、明らかな効果があったという報告はありません。外科療法外科療法は腫瘍の摘出を行います。摘出方法は以下の通りです。膀胱部分摘出膀胱全摘出症例の腫瘍の大きさや麻酔のリスク、飼い主様の術後のフォローを含めて手術方法を選択します。猫の膀胱移行上皮癌の余命は?余命については手術を行った方が伸びるとの報告があります。治療を行わなかったグループは中央生存日数は46日抗がん剤などの化学療法を行ったグループは176日手術+化学療法を行ったグループは294日という報告があります。症例症例は17歳10ヶ月の避妊済みの雑種猫です。「具合が悪そう。膀胱炎かもしれない。」とのことでご来院されました。超音波の検査では膀胱の内側の壁の粘膜が広範囲に分厚くなっていました。この日は膀胱炎の治療を行い、1週間後の再診としました。1週間後「朝はよくトイレに入るが、日中は頻尿も落ち着いている」とのことでした。膀胱の粘膜のボコボコや腫れは悪化しており、膀胱の移行上皮癌を疑い各種検査を行いました。レントゲン検査では肺の転移は認められませんでした。超音波検査では膀胱の状態を確認し、膀胱近くのリンパ節を確認しましたが、リンパ節の腫れはありませんでした。細胞診の検査も行いましたが、結果は尿管上皮過形成という結果でした。この結果の場合、可能であれば細胞診ではなく組織診を実施しますが、組織診のためには麻酔をかけ、お腹を開ける必要があり飼い主様と相談の上、組織診や外科治療は実施しないこととなりました。その後、抗がん剤を使用せず、生活の質の維持・向上を目的とした治療のみを行いましたが、膀胱粘膜の腫れを発見してから50日後に亡くなりました。まとめいかがでしたでしょうか?特に高齢の猫ちゃんでは、血尿や頻尿は感染症や尿石症ではなく、腫瘍の可能性があります。腫瘍も摘出は腫瘍が小さければ小さいほど完全に摘出できる可能性が高くなりますし、術後のトラブルなども起こりにくくできます。おや?と思ったら一度動物病院までご相談ください。一緒に治療方法を考えていきましょう!