糸状菌とは糸状菌は、いわゆる『カビ』です。ワンちゃん猫ちゃんのカビは人にも感染し、その再発率が高いことでも有名です。そのため治療前はもちろん、治療後も再感染には注意が必要です。今日はそんな糸状菌症について詳しく解説していきます。ワンちゃん猫ちゃんに最も多いとされているカビはMicrosporum canis という種類です。中にはM gypsum やTrichophyton mentagrophytes が感染することもあります。人にうつるの?上記にも示した通り、残念ながらワンちゃん猫ちゃんの糸状菌は人にうつります。肌に円環状の痒みを伴う皮膚炎ができた場合は速やかに皮膚科を受診してください。皮膚科で真菌症と診断された時は、飼っているワンちゃん猫ちゃんに明らかな症状がなくとも、毛の下に隠れて糸状菌が感染している場合がありますので動物病院へ連れて行きましょう。どういう動物が感染するの?診察で診る機会が多いのはペットショップやブリーダさんからお家にきたばかりの若齢の子たちです。多くの動物と触れ合う機会が多い環境にいる動物は糸状菌症に感染しやすいです。そのため、猫カフェや保護団体さんでも一頭の子が感染しており、その真菌が他の子に感染してしまうことも珍しくありません。また、免疫が弱っている高齢の子たちも、感染のリスクは上がります。ただし、家で飼育しており、他の子たちとの接触が基本的にない動物さんは感染する機会がありませんのでご安心ください。猫ちゃんたちは糸状菌の感受性(感染のしやすさ)が比較的高いと言われており、ワンちゃんは感受性がそこまで高くないと言われています。お散歩やトリミングサロンに行くワンちゃんもそこまで強い警戒はしなくても大丈夫ですが、当然糸状菌の感染中はトリミングサロンや他のワンちゃんとの接触は避けてください。診断診断はその皮膚や毛の外貌、また毛の顕微鏡所見やウッド灯検査、真菌培養、PCR検査を行うことで総合的に判断していきます。皮疹は頭部(瞼の上や鼻)肢端に好発します。脱毛を伴うものや瘡蓋に似たような見た目をしていることもあります。猫は通常、痒みはあまり認められません。しかしまれに強い痒みがある場合もあります。対して犬は軽度の痒みを伴うことが多く、中には猫と同じく強い痒みが出る場合もあります。治療基本的に動物は皮膚が毛で覆われており、全身の毛を観察することや、毛に覆われた皮膚を完全に把握することが難しい生き物です。そのため、2ヶ所以上の真菌が疑われる所見がある場合は内服薬による治療が望ましいとされています。1ヶ所に現局している場合や内服が難しい場合は抗真菌薬の塗り薬で対応する場合もあります。再感染や、なかなかコントロールできない場合は全身の毛刈りをし、シャンプーを用いた洗浄を行うこともあります。お家での環境整備基本的に動物さんに対するケアはそこまで必要ありません。投薬や、塗り薬、必要な場合はシャンプーを実施していただくことがあります。しかし、大事なのは落ちた被毛からの再感染です。真菌は自然環境化でも1年以上の感染力を保持するとの報告もあります。少し前までは買い換えれるものは買い替え、毛布などは焼却処分してくださいとお伝えしていたようです。しかし、今は洗濯を2回以上してもらい、乾燥機で熱を加えれば感染力はかなり落とせるという報告もあります。実際に猫ちゃんが使用していた毛布やクッションはもちろん、一緒に寝ている場合はお布団やベッドカバー、枕も洗濯が必要です。またフローリングにも落ちている可能性は十分ありますので、すぐに捨てられるフローリングシートなどをご活用いただくのも良いかと思います。洗濯できないものは次亜塩素酸ナトリウムを希釈し、拭いてお掃除をしてもらいます。症例1犬 トイプードルメス 4ヶ月ペットショップから迎えた時から背中に瘡蓋のようなものがついていると受診されました。検査皮膚の抜毛検査で真菌が疑われ、PCRの検査を実施しました。結果Microsporum canis、sppの陽性が確認されました。治療ケトコナクリーム(抗真菌薬)の患部に塗布をしてもらい、家の掃除の徹底をお願いしました。経過今現在は治療も終了し被毛も元通りになりました。【写真:治療中 痂皮は減少傾向】【写真:脱毛もなくなり、毛も生えてきた】症例2猫 ラグドールメス 9ヶ月【写真:鼻の上に瘡蓋があり、この後鼻の頭は全体的に脱毛する】1ヶ月前にブリーダーよりお家にお迎えし、耳ダニの治療中に、鼻の上の皮膚の傷のような脱毛が認められました。検査【写真:特徴的な顕微鏡所見が見られる(海ぶどう状)】皮膚の抜毛の検査を行い、顕微鏡で確認したところ真菌の可能性が強く疑われました。飼い主様とご相談の上、培養の検査やPCRの検査を実施せず、治療を行うこととしました。治療長毛種であることから、他の場所の真菌感染を確認することは難しいと判断し、血液検査で肝数値が問題無いことを確認したのち抗真菌薬を処方しました。また、お家の掃除の徹底をお願いしました。経過鼻の頭の毛も綺麗に生えてきました。特に他の場所への感染もなく、良好です。【写真:現在の様子】まとめ真菌症は命に関わることはありません。しかし、動物の真菌は人にもうつり、また他の動物にも容易に感染します。若齢の子でなかなか治らない瘡蓋がある、痒がっているなどあれば早めにご相談くださいね。