こんにちは!渋谷区にあります、渋谷動物医療センターです。今回は猫伝染性腹膜炎、通称FIPのお話についてです。FIPとは?このFIPは猫ちゃんを飼ったことがある人は聞いたことがあるかもしれません。FIPは致死率がかなり高い病気です。数年前までは効果がある薬もありませんでした。FIPには有効なワクチンはありません。FIPを引き起こすウイルスは腸コロナウイルスが変異したものと考えられています。FIPにはウェットタイプとドライタイプがあります。ウェットタイプは腹水や、胸水が溜まり、ドライタイプはリンパ節の腫脹や脾臓、肝臓、腎臓、小腸などに線維素性、肉芽腫性の病変を形成します。症状ただ、症状としては食欲不振発熱元気の消失 などで、特異的ではなく、気づくのが遅れる要因になってしまいます。胸水や腹水が溜まると呼吸困難腹部膨満 などが見られること、 また粘膜の黄疸 が見られることもあります。症例猫 マンチカン 4ヶ月メス 1.2kg午前中、他院でワクチン接種の予定でしたが発熱が認められワクチンが延期となった症例でした。午後に午前よりもしんどそうだと当院に連絡があり来院されました。当院での熱は40.8度でした。検査呼吸の促迫も認められたため、胸部のレントゲンの撮影を行いました。【レントゲン:胸部の腹側に白いすじ状に溜まった胸水が認められる】レントゲン上、胸水の貯留が認められたため、胸水を抜去しました。【写真:抜去した胸水】1.2kgの体重の子から40mlの胸水が抜けました。この胸水はやや粘稠度があり、透明、黄色でした。比重は1.036 TP8.6で滲出性の胸水でした。血液検査では白血球の上昇、タンパクの軽度上昇が認められました。胸水を検査会社に提出し、細菌に感染・ウイルス感染の有無を調べました。結果は、腸コロナウイルスが存在しない場所からの腸コロナウイルスが検出されたという結果であったため、FIPと診断しました。治療FIPは上記のように致死率が高い病気であり、今現在でも明確な治療方法は確立されていません。ただ、米国で開発されたGS-441524,GC376は治療薬として使用されており、またその治療反応も良いとの報告もあります。ただし、治療費がかなり高額になることや薬剤としての販売を規制されてきていることもあり、誰でも使用可能だということは言えないのが現状です。その他の治療としては抗ウイルス薬・抗炎症薬や最近治験が集まってきているお薬を使用します。