みなさまはこんな猫にもアトピーやアレルギーがあることをご存知ですか?「最近お腹が禿げてきた」「かいているそぶりは無いのに、瞼あたりの毛がなく、ブツブツしている」「頭の上や耳あたりの毛が無い」などというお悩みの飼い主様もいらっしゃるかもしれません。実はそれ、猫アトピー症候群かもしれません。今日はそんな、猫アトピー症候群について解説していきます。もし、お腹や脇の脱毛、皮膚のブツブツに悩んでいる飼い主様がいらっしゃればぜひ最後まで読んで猫のアトピー症候群について知っていただければと思います。猫アトピー症候群とは猫アトピー症候群とは、過去に過敏性皮膚炎という名前だったものです。猫アトピー症候群にはアトピー性皮膚炎食物アレルギー猫喘息が含まれます。つまり、外部寄生虫やカビなどの感染、皮膚の腫瘍など痒みが出ているわけでなければ、猫アトピー症候群に含まれる可能性が高いと言えます。診断基準猫のアトピー症候群は総合的な判断が必要な疾患とされています。「この検査でこういう結果だったら、猫アトピー症候群です!」というものはなく、「何個かある項目を満たせばアトピー症候群の可能性が高い」という診断になります。では、診断基準を見ていきましょう。少なくとも2箇所以上の皮膚病変がある以下の皮膚病変が少なくとも2つ以上 ・対称性脱毛 ・ブツブツした皮膚炎 ・好酸球性皮膚炎 ・頭と首のびらん・潰瘍対称性脱毛唇の病変下顎あるいは首のびらん・潰瘍腰回りには皮膚炎がない腰回り、尻尾に左右対称性の脱毛がないしこり状ではないこれらのうち、5つ以上当てはまる場合は猫アトピーの可能性が高くなります。もう少しシンプルな診断基準最近では上記の診断基準よりも、よりシンプルな診断基準が出てきました。外部寄生虫やカビなどの感染症や、腫瘍を否定できたら以下の基準に当てはまるかを見ていきます。頭や首の皮膚の脱毛対称性の脱毛好酸球性肉芽腫症候群ブツブツした皮膚これらのうち、1つでも当てはまったら猫アトピー症候群と診断します。上の診断基準より、かなりシンプルになりました。治療今、猫アトピー症候群に対して効果があると言われている治療はプレドニゾロンシクロスポリンオクラシチニブがあります。それぞれ解説していきます。プレドニゾロンみなさまの効き馴染みのある名称はステロイドかと思います。プレドニゾロンは犬のアトピーでも使用されてきた歴史が長く、その有効性が証明されています。プレドニゾロンのメリットは即効性がある安価であるプレドニゾロンのデメリットは多飲多尿過食糖尿病になりやすくなる皮膚が薄くなる感染症になりやすいシクロスポリンシクロスポリンはいわゆる免疫抑制剤です。シクロスポリンのメリットは副作用が少ない治療効果が高いシクロスポリンのデメリット効果が出るまでに時間がかかる費用がステロイドに比べて高いオクラシチニブ元々犬用のアトピー治療薬として開発された、比較的新しい薬です。最近では猫の痒みにも効果があると報告されています。薬の容量も決まってきていますが、犬よりも高容量が必要とされています。副作用には好中球や血小板の減少BUN ,Creなどの腎数値の上昇消化器症状などが報告されています。オクラシチニブの長期使用の報告はまだなく、猫での使用は効能外であることには注意が必要です。どうやって治療法を選択するのかプレドニゾロンのメリットは、安価で即効性があることです。一時的な痒みや、本当にアトピー症候群なのか?という場合の試験的な使用には向いていると言えます。また、プレドニゾロンには塗り薬もありますので、局所の痒みや皮膚炎であれば塗り薬も選択できます。シクロスポリンは副作用が少ないことがメリットです。そのため長期の使用が予測される場合は、シクロスポリンの方が良いと言わざるを得ません。しかし、シクロスポリンの効果発現までには時間がかかることから、治療の導入にはプレドニゾロンとの併用が必要な場合が多いでしょう。オクラシチニブはプレドニゾロンで副作用が出てしまった場合や、感染症があり、シクロスポリンが使用できない時に使います。他にできること「投薬が難しい」「お薬を飲んでいてもどうしても舐める・掻いてしまう時がある」そういう時は、対策としてスプレータイプのステロイド薬洋服エリザベスカラーなどがあります。実際の症例症例1症例は6歳の避妊済みのアメリカンカールです。「左右の目の上の皮膚に赤みがある」とご来院されました。感染症を否定するために、皮膚の検査を実施しました。皮膚の検査では、明らかな寄生虫や細菌・真菌の感染は確認されませんでした。アトピーの診断基準に沿って診断したところ、6/8の項目を満たしていました。猫アトピー症候群の可能性が高いとし、初回はプレドニゾロンによる治療を行いました。この時、念の為に外部寄生虫の駆虫薬も実施しております。プレドニゾロンによる効果が確認されたため、より猫アトピー症候群の可能性が高いと診断しました。プレドニゾロンの治療を長く続けることは、副作用の点からあまり希望されず、シクロスポリンを使用するようにしました。現在はアトピカで皮膚炎のコントロールができています。症例2症例は2歳の避妊済みのアビシニアンです。「耳を痒がっている」と来院されました。✳︎お写真は耳を痒がっているときのお写真ではありません✳︎身体検査では左右の耳に対称性の赤み、傷、かさぶたがついていましたが、耳に汚れや感染はありませんでした。この時点で、猫アトピー症候群を疑い、ステロイド入りの塗り薬を処方しました。耳の痒みはあまり治らず、赤みもあるとのことから、シクロスポリンを開始することにしました。シクロスポリンの効果が出るまではステロイドで維持しています。シクロスポリンを開始して、皮膚の調子も良くなりました。しかし、約一年後にシクロスポリンを使用しているにもかかわらず、同居の猫との喧嘩をきっかけに、皮膚炎が続いていると来院されました。短期間のステロイドの使用と、食物アレルギーの可能性を考えて、フードの変更を行いました。今現在は皮膚も綺麗で、シクロスポリンとアレルギー用のフードを続けています。まとめ猫のアレルギーやアトピーはまだまだ発展途上の分野でもあります。犬のような信頼性の高いアレルギー検査もありません。そのため一つ一つ、皮膚炎の原因を探っていくことが大切です。「長期間にわたって、ステロイドを飲んでいる」「頻繁に痒そうにしている」などあれば、一度当院までご相談下さい。一緒に愛猫のベストな治療を探しましょう!